ジグシアターは鳥取県中部に位置する、東郷池を一望する丘の上にある小さな映画館です。2021年7月に開館し、柴田修兵と三宅優子のふたりで運営しています。

映画館の名前は大工用語の治具(ジグ)からとりました。“現場や工場での加工や組み立て作業のためにさしあたり必要になるけれど、成果物には残らないガイド”のことを「ジグ」と呼ぶそうで、哲学者の福尾匠さんのTwitterで知って以来ずっと気になっていた言葉です。

映画館にはスクリーンやスピーカーなどの設備が必要ですが、映画が始まってしまえば観客はそれらを意識することはありません。そして映画館は観客に様々な映画の存在を知らせ映画まで誘導するガイド役を担っています。この映画館の名前を映画監督の濱口竜介さんに伝えたとき、「映画館(文化)は社会の組み立てをどこか根本的に誘導するような存在かもしれない」という言葉をいただきました。大袈裟だと思われるかもしれませんが、社会をも組み立ててしまうようなもの、それが映画なのです。

では、ジグシアターはどんな案内役として、皆さんをどこにお連れしたいのか。私たちは「戸惑い」を案内する映画館でありたいと思っています。

一風変わった、あるいはあまりに真摯な作りの映画を観た時、ある種の戸惑いを感じることがあります。映画というのが見知らぬ世界への窓となるだけでなく、見知ったはずの世界を別様に変えてしまうからです。それはすぐにこの社会の役には立つようなものではないかもしれませんが、私たちの人生を、そして社会のあり方をも根本的に変えてしまうかもしれない。

ホウシャオシェン監督の『風櫃の少年』でこんなエピソードがありました。
離島の漁村「風櫃(フンクイ)」で育った不良少年たちが、大都会高雄に出稼ぎに行きます。映画でも見ようかと街をぶらぶらしているとバイクに乗った怪しげな男が「ワイドスクリーンの映画が観れるよ」と誘います。退屈しのぎにチケットを買った不良少年たちが男の指定する雑居ビルの中に入ると、その部屋は打ちっぱなしコンクリートのがらんどう。壁が一面根こそぎ切り取られており、そこからは高雄の都市の風景が広がっているのが見えます。
ワイドスクリーン。
その時、不良少年たちが感じたことは様々に想像させられますが、ただ彼らがこの光景を見たことをずっと覚えていることは確かでしょう。戸惑いはいつか見た忘れえぬ光景として残り、これからの人生と共にある。

ジグシアターはそんな映画を皆さんに案内します。

689-0711
鳥取県東伯郡湯梨浜町松崎619 3F
google map

mail@jigtheater.com

JR松崎駅より湖畔を歩いて約15分

鳥取市方面より泊東郷ICから車で約7分

米子市方面よりはわいICから車で約13分 

駐車場24台分あり