これまでジグシアターでかけてきた映画の中で、おそらく最も有名で、すでにご覧になった人が多い作品かもしれません。それでもあらためて『この世界の片隅に』を上映することにしたのは、今この作品をジグシアターで観てもらいたいと思ったからです。
『この世界の片隅に』は、主人公のすずさんの日々の暮らしの動きと音であふれています。台所で料理を作り、衣服を繕って直し、家を整え、食卓を囲んで他愛もないことを話し、夜眠りにつく。あまりにもささやかであたり前の毎日の積み重ね。今の私たちとそれほど変わらない暮らしのなかで、いちばん違っているのはたった80年前にこの国は戦争のさなかにあったということ。普通じゃないことが普通になっていた時代、そんな時代にも小さな楽しみやおかしみを忘れず、普通に生きようとしたすずさん。
9年前、小さな映画館から上映が始まるとすぐに大きな話題となり、数々の賞を受賞して社会現象となるほどの広がりを見せました。テレビでも放映されたので、ご覧になった人もたくさんいると思います。けれど、この作品はおそらく「一度観ただけでわかること」がとても少なく作られています。私たちの人生と同じように、言わなかった言葉、見られなかった景色、選ばなかった未来がとても静かに織り込まれているからです。だからこそ、そっと隣に寄り添うように、声にならない声に耳を傾けるように、何度でも繰り返しこの作品と過ごしてほしい。漫画原作のこうの史代さんと映画監督の片渕須直さんのそんな思いと一緒に届けられればと思います。
たった数年間でも時代の風向きは少しずつ変わり、戦争への思いもどこかバラバラになっているように感じます。それでも、あの過ちを繰り返さぬために、私たちは繰り返し繰り返しこの作品と出会い、この世界の片隅にすずさんを見つけたいと思います。
[official introduction]
2025年8月。日本はあの戦争の終結から80年の節目を迎えます。そして、もしこの物語の主人公・すずさんが、この世界のどこかで今も暮らし続けているならば、今年、百歳。
こうの史代による同名漫画を原作に、片渕須直が監督・脚本を手がけた長編アニメーション映画『この世界の片隅に』(2016年公開)が、全国の映画館に帰ってきます。戦時下の広島・呉を舞台に、大切なものを失いながらも毎日を営み続ける女性・すずを描いた本作。公開当初は63館でのスタートながら、かけがえのない日常とその中で紡がれる小さな人の気持ちが共感を呼び、観客の声に押されて公開が拡大。累計484館、総動員数210万人を超える社会現象になりました。
さらに、第40回日本アカデミー賞 最優秀アニメーション作品賞ほか、第90回キネマ旬報ベスト・テン日本映画第1位など、アニメーション映画としては異例となる日本映画賞を次々と受賞。その評価は海を越え、国際的な映画祭でも高く評価されました。あれから9年。時は流れても変わらず心に残り続ける物語が、期間限定で劇場の大スクリーンによみがえります。
炊事の湯気、絵の具の匂い、バケツの重さ、ほほをなでる風。なにげない日々の中に、たしかにあった命の灯り。すずさんが見つめていた“片隅”から、80年の時を経て、いまを生きる私たちへ。
[Story]
1994(昭和19)年2月。18歳のすずは、突然の縁談で軍港の街・呉へとお嫁に行くことになる。新しい家族には、夫・周作、そして周作の両親や義姉・径子、姪・晴美。配給物資がだんだん減っていく中でも、すずは工夫を凝らして食卓をにぎわせ、衣服を作り直し、時には好きな絵を描き、毎日のくらしを積み重ねていく。1945(昭和20)年3月。呉は、空を埋め尽くすほどの艦載機による空襲にさらされ、すずが大切にしていたものが失われていく。それでも毎日は続く。そして昭和20年の夏がやってくる―。
のん 細谷佳正 稲葉菜月 尾身美詞
小野大輔 潘めぐみ 岩井七世 牛山茂 新谷真弓/澁谷天外(特別出演)
監督・脚本:片渕須直
原作:こうの史代『この世界の片隅に』(コアミックス刊)
企画:丸山正雄
監督補・画面構成:浦谷千恵
キャラクターデザイン・作画監督:松原秀典
美術監督:林孝輔
音楽:コトリンゴ
プロデューサー:真木太郎
製作統括:GENCO
アニメーション制作:MAPPA
配給:東京テアトル
製作:「この世界の片隅に」製作委員会
Konosekai.jp Twitter: @konosekai_movie
© 2019こうの史代・コアミックス /「この世界の片隅に」製作委員会
【上映期間】
8/1(金)、2(土)、6(水)、9(土)、10(日)、15(金)の6日間
【料金】
一般・シニア 1,800円
25歳以下 1,300円
18歳以下 500円
同作品リピート割 1,000円
福祉手帳割(介助者1名まで割引適用)1,000円
【上映時間】
この世界の片隅に/129分(2時間9分)
この世界の(さらにいくつもの)片隅に/168分(2時間48分)
【公式サイト】
https://konosekai.jp/