8/26〜9/5まで「ケリー・ライカートの映画たち 漂流のアメリカ」を上映します!
現代アメリカ映画の最重要作家ケリー・ライカートが紡ぐ、4つのロードサイダーズ・ストーリー。アメリカン・ドリームが失われた世界にさすらう者たちの、語るに足る、ささやかな抵抗。


 

ケリー・ライカートの良さを伝えるのはけっこう難しい。

信頼できる映画好きの友人はケリー・ライカートの作品を昨年観た映画のベストだとしながらも「ちょっと地味だから人に勧めにくい」と言っていた。自分自身は良いと感じながらも人とそれを共有できるかわからないことがある。おそらく夏の夜の匂いにどうしようもなく惹かれるとかそういった類の良さだと思う。伝わりやすくはない。

そういえばケリー・ライカート作品の登場人物たちも孤独で、ただ安易に人とわかりあう行為とは縁遠い。内省を大切にしているように見える。その内省が積極的に語られることはない。ただ私はそうした人物たちが動いていく風景にアメリカを感じる。アメリカのことをよく知ってるわけじゃない。でもケリー・ライカートの映画を観てからいつもの鳥取の田んぼ道を自転車で走り抜ける時に、コージーが、リーが、マークが、カートが、ウェンディが、エミリーが、そしてルーシーが見ていた何かを、未知のアメリカの風景を、感じている気がする。

小さな映画館の暗闇の中で少しの退屈を抱きしめてみるのはいかがだろうか。アメリカの風景が、鳥取の晩夏に流れてくる。

[Official introduction]

『リバー・オブ・グラス』

楽園リゾート都市マイアミのほど近く、なにもない郊外の湿地で鬱々と暮らす30歳の主婦コージーは、いつか、新しい人生を始めることを夢見ている……。
20代最後の年、故郷に戻ったライカートが、逃避行に憧れ、アバンチュールに憧れ、アウトローに憧れた、かつての思春期の自身に捧げた「ロードの無いロード・ムービー、愛の無いラブ・ストーリー、犯罪の無い犯罪映画」。撮影許可料が払えず、警察から幾多の圧力を受けながら、ゲリラ撮影で完成させた珠玉のデビュー作。

監督:ケリー・ライカート

脚本・製作:ケリー・ライカート、ジェシー・ハートマン
撮影:ジム・ドゥノー
編集:ラリー・フェセンデン
音楽:ジョン・ヒル
プロダクション・デザイナー:デヴィッド・ターンバーグ
衣装デザイン:サラ・ジェーン・スロットニック
出演:リサ・ドナルドソン(リサ・ボウマン名義)、ラリー・フェセンデン、ディック・ラッセル、スタン・カプラン、マイケル・ブシェミ
1994年/アメリカ/スタンダード/カラー/76分 字幕翻訳:上條葉月

 


 

『オールド・ジョイ』

もうすぐ父親になるマークは、ヒッピー的な生活を続ける旧友カートから久しぶりに電話を受ける。キャンプの誘い。 “戦時大統領”G・W・ブッシュは再選し、カーラジオからはリベラルの自己満足と無力を憂う声が聞こえる……。ゴーストタウンのような町を出て、二人は、ポートランドの外れ、どこかに温泉があるという山へ向かう。
『リバー・オブ・グラス』から12年――貯めた資金をもとに完成の目処なくスタートした企画だったが、ライカートの評価を一躍高めた2作目。

監督・編集:ケリー・ライカート

脚本:ケリー・ライカート、ジョン・レイモンド
製作:ジュリー・フィッシャー、ラース・クヌードセン、ニール・コップ、アニッシュ・サヴィアーニ、ジェイ・ヴァン・ホイ
製作総指揮:トッド・ヘインズ、ラージェン・サヴィアーニ、ジョシュア・ブルーム、マイク・S・ライアン
撮影:ピーター・シレン
音楽:ヨ・ラ・テンゴ、スモーキー・ホーメル(グレゴリー・“スモーキー”・ホーメル名義)
出演:ダニエル・ロンドン、ウィル・オールダム、ターニャ・スミス
2006年/アメリカ/ヴィスタ/カラー/73分 字幕翻訳:上條葉月

 


 

『ウェンディ&ルーシー』

『オールド・ジョイ』に惚れ込み、ライカートに自らアプローチしたミシェル・ウィリアムズを主演に迎えた、一人と一匹の異色のバディが織りなす彷徨譚。ほぼ無一文のウェンディは、愛犬ルーシーと共に新しい生活を始めるため、仕事を求めてアラスカへと向かっている。しかし、途中オレゴンのスモールタウンで車が故障。さらに警察に連行されてしまい、ルーシーは行方不明に……。
ライカート自身「これは私の物語でもある」と語る、世界の悲惨と個人の尊厳を描き切った代表作。

監督・編集:ケリー・ライカート
脚本:ケリー・ライカート、ジョン・レイモンド
製作:ニール・コップ、アニッシュ・サヴィアーニ、ラリー・フェセンデン
製作総指揮:トッド・ヘインズ、フィル・モリソン、ラジェン・サヴィアーニ、ジョシュア・ブルーム
撮影:サム・レヴィ
出演:ミシェル・ウィリアムズ、ウィル・パットン、ジョン・ロビンソン、ラリー・フェセンデン、ウィル・オールダム、ウォルター・ダルトン
2008年/アメリカ/ヴィスタ/カラー/80分 字幕翻訳:上條葉月

 


 

『ミークス・カットオフ』

アメリカのアイデンティティの根源たる西部開拓神話が、ライカートのオルタナティブな視点とスタイルによって見事に解体された歴史的一作。1845年のオレゴン。広大な砂漠を西部へと向かう白人の三家族は、近道を知っているというミークを雇うが、長い1日が何度繰り返されど、目的地に近づく様子はない。道に迷った彼らを襲うのは飢えと互いへの不信感だった……。
実在の人物と史実をベースに、当時の女性たちが密かに綴った日記を丹念に読み込み、現代の寓話として生々しく再構築した意欲作。

監督・編集:ケリー・ライカート
脚本:ジョン・レイモンド
製作:ニール・コップ、アニッシュ・サヴィアーニ、エリザベス・カスレル、デヴィッド・ウルティア、ヴィンセント・サヴィーノ
製作総指揮:トッド・ヘインズ、フィル・モリソン、ラージェン・サヴィアーニ、アンドリュー・ポープ、スティーヴン・タットルマン、ローラ・ローゼンタール、マイク・S・ライアン
撮影:クリストファー・ブローヴェルト
プロダクション・デザイナー:デヴィッド・ターンバーグ
衣装デザイン:ヴィッキー・ファレル
音楽:ジェフ・グレイス
出演:ミシェル・ウィリアムズ、ブルース・グリーンウッド、ウィル・パットン、ゾーイ・カザン、ポール・ダノ
2010年/アメリカ/スタンダード/カラー/103分 字幕翻訳:高橋文子

上映スケジュール・予約はこちら

【上映期間】

2021年8月26日(木)ー9月5日(日)
※月火水休み

【料金】

一般・シニア 1,800円
大学生    1,300円
高校生以下  1,000円
4回通し券  6,000円

【上映時間】

『リバー・オブ・グラス』
76分(1時間16分)
『オールド・ジョイ』
73分(1時間13分)
『ウェンディ&ルーシー』
80分(1時間20分)
『ミークス・カットオフ』
103分(1時間43分)
各回30分前に開場します

【公式サイト】

https://www.kelly2021.jp/