ジグシアターの開館時に『逃げた女』を上映してから5年。
ホン・サンス監督は、2020年から2025年のあいだに今回上映する10本の映画を撮りました。5周年を迎える劇場で、ひさしぶりのホン・サンスに出会ってください。

 


 

ホン・サンス作品では、私たちが映画に期待しているような出来事はほとんど起こらない。

会話はいつもどこかむず痒く、欲望や思惑が見え隠れしているのに、はっきりとは現れない。ほんのわずかに言葉の調子が変わり、気まずい沈黙が差し込まれる。そのわずかな揺れだけで、関係の温度が動いていく。酒を飲み、少しだけ本音がこぼれ、翌日には何もなかったように振る舞う。芸術や創作、人生についての話も交わされるが、多くは曖昧なまま、不意にこちらに届く言葉が混じる。ほんの少しの言い方やふるまいの違いで、まったく別の時間が立ち上がっていたかもしれないのに、気づくこともないまま、会話は過ぎ時間は流れていく。

私たちの人生も、だいたいそんなものかもしれない。伏線がきれいに回収されることも、確信を得ることもないまま、誰かに話すほどでもないけれど、少しだけ爽やかな気持ちになったり、小さな違和感を抱えたりして、ふとした拍子に思い返す。ホン・サンスの映画に登場する人たちは、共感や感情移入の対象というより、ただそこにいる「彼」や「彼女」たちのように見える。街の風景や建物も、誰にも親しげな顔を見せることなく、ただそこにある。けれど、ふとした瞬間に、「彼」や「彼女」が、「わたし」や「あなた」として立ち上がる。店先で、路地で、窓辺で、小川のほとりで。そのとき、はじめてこの映画の出来事に気づき、わたしたちの人生の時間に気がつくのかもしれません。

 


 

『逃げた女』

5年間1日たりとも離れたことのない夫、
愛しているなら当然と思ってきた、今日までは。
迷いと優しさ、隠された本心女は何から逃げたのか…

出演:キム・ミニ、ソ・ヨンファ、ソン・ソンミ
2020年|77分

◆第70回ベルリン国際映画祭銀熊賞(監督賞)受賞

 


 

『イントロダクション』

青年ヨンホをめぐる3つの再会と3つの“抱擁”
思い通りにいかない人生の痛みと愛しさ
先の見えない時代に生きる全ての若者たちへ

出演:シン・ソクホ、パク・ミソ、キム・ヨンホ
2020年|66分

◆第71回ベルリン国際映画祭銀熊賞(脚本賞)受賞

 


 

『あなたの顔の前に』

突如、アメリカから故郷へ帰ってきたサンオク。
家族や捨てたはずの過去、果たされることのない未来への約束
彼女が戻ってきた理由とは…

出演:イ・ヘヨン、チョ・ユニ、クォン・ヘヒョ
2021年|85分

 


 

小説家の映画

「私たち、一緒に映画を作りませんか?」
小説家と女優、ふたりの女性の幸福なめぐり合わせが生んだ、
思いがけないコラボレーションの行方は…

出演:イ・へヨン、キム・ミニ、ソ・ヨンファ
2022年|92分

◆第72回ベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員大賞)受賞

 


 

WALK UP

それはモノクロームの儚い夢か、それともパラレルワールドか
4階建てのアパートを舞台にした、芸術家たちの4章の物語

出演:クォン・ヘヒョ、イ・ヘヨン、ソン・ソンミ
2022年|97分

 


 

水の中で

話題の“全編ピンボケ”映画夏の終わりの済州島、
自主映画を撮るために集まった男女3人組を描く青春ドラマ

出演:シン・ソクホ、ハ・ソングク、キム・スンユン
2023年|61分

◆第73回ベルリン国際映画祭出品

 


 

私たちの一日

元女優と老詩人、それぞれの元を訪れる悩める若者たち。
交わりそうで交わらない二人の一日をめぐる至極の会話劇
人生には刺激が必要だ

出演:シン・ソクホ、ハ・ソングク、キム・スンユン
2023年|61分

◆第76回カンヌ国際映画祭監督週間クロージング作

 


 

旅人の必需品

詩、マッコリ、年下のボーイフレンド
風変わりな方法で韓国人にフランス語を教える女の
ミステリアスな一日を描くコメディドラマ

出演:イザベル・ユペール、イ・ヘヨン、クォン・ヘヒョ
2024年|90分

◆第74回ベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員グランプリ)受賞

 


 

小川のほとりで

一度だけの舞台、一晩だけの本音
女子大の演劇祭をめぐり、
学生たちと大人たちの恋愛模様が交錯するキャンパス群像劇

出演:イザベル・ユペール、イ・ヘヨン、クォン・ヘヒョ
2024年|90分

◆第77回ロカルノ国際映画祭最優秀演技賞(キム・ミニ)受賞

 


 

自然は君に何を語るのか

恋人の両親とたまたま過ごすことになった青年の一日。
和やかな会話は酒が進むにつれて気まずさを帯びていく
辛くて可笑しくて目が離せない酩酊ホームドラマ

出演:ハ・ソングク、クォン・ヘヒョ、チョ・ユニ
2025年|108分

◆第75回ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品

 


 

上映スケジュール・予約はこちら

【上映期間】

4/29(水祝)、5/2(土)、3(日)、5(月祝)、6(火祝)、9(土)、10(日)、11(月)、13(水)、16(土)、17(日)の11日間

【料金】

10作品通し鑑賞券 13,000円
5作品通し鑑賞券 7,500円

一般・シニア   1,800円
25歳以下      1,300円
18歳以下      500円
同作品リピート割 1,000円
福祉手帳割(介助者1名まで割引適用)1,000円

【上映時間】

逃げた女
77分(1時間17分)

イントロダクション
66分(1時間6分)

あなたの顔の前に
85分(1時間25分)

小説家の映画
92分(1時間32分)

WALK UP
97分(1時間37分)

水の中で
61分(1時間1分)

私たちの一日
84分(1時間24分)

旅人の必需品
90分(1時間30分)

小川のほとりで
111分(1時間51分)

自然は君に何を語るのか
108分(1時間48分)