おくりもの

 

伝統と現代性の対比を鮮烈に描いたデビュー作

公開から22年の時を経てフランマルティーノの幻のデビュー作が、ついに日本初公開。監督の実 祖父アンジェロ・フランマルティーノを主演に迎え、人口流出によって廃村寸前のカラブリアの小 さな村を舞台に、老いた男の最期の日々を独特のユーモアを持って静かに見つめる。プロの俳 優を一切使わず、土地に生きる人々とともに撮影された本作は、「伝統と現代性」「生と死」「共同 体と孤独」という普遍的なテーマを、対話をほとんど持たない80分の映像詩として結晶させた。 4Kレストアによって甦ったカラブリアの風景の細部、やや翳りを帯びた色調に浮かび上がる光の 変化と、時間の経過を感じさせる物質の質感──20年以上前の作品でありながら、現代の映画体 験として圧倒的な存在感を放つ。2000年代初頭の「スロー・シネマ」ムーブメントの重要な一作と して、2025年7月にNYのメトログラフ劇場でリバイバル上映が行われるなど、映画史的再評価が 進む傑作。

[Story]
南イタリアの過疎化が進む田舎の村に暮らす老いた男。ある日、老犬の埋葬を手伝ってくれた青年たちが、携 帯電話と共に1枚の紙きれを忘れていく。それは、個人的な目的で撮影されたヌード写真だった。後日、老人は 村で1人の女性に目を留める。その女性は、写真に写っていた人物だった…。

第56回 (03年)スイス・ロカルノ映画祭正式出品(プレミア上映)
第44回(03年)ギリシャ・テサロニキ映画祭審査員特別賞受賞
第20回(04年)ポーランド・ワルシャワ国際映画祭スペシャル・メンション

原題:IL DONO/2003年/イタリア/80分/35mm(上映素材はDCP)/カラー/1.37:1/ 5.1ch/4K (C) Santamira – Coop. CA.RI.NA.

 


 

イタリア映画史で異彩を放つ孤高の映像作家、
ミケランジェロ・フランマルティーノ
本邦初公開のデビュー作を含む全長編3作品を一挙上映

 

[Official introduction]
イタリア映画史において唯一無二の存在感を放つ映像作家、ミケランジェロ・フランマルティーノ。 その作品は、言葉に頼らず、南イタリア・カラブリアの荘厳な風景や、そこに刻まれる時間の神秘 を静謐なカメラワークで描き出します。人間、動物、大地、そして闇──すべての存在が等しく尊厳 を持ち、調和の中で生きる様子を映し出すその世界には、誰も見たことがない驚きと畏敬が満ち ています。 情報が溢れ、膨大な映像が消費される現代において、フランマルティーノの映画は「見る」という 行為の根源的な意味を問いかけます。そこにあるのは、明快な物語ではなく、光と影の移ろい、 風のささやき、動物の息遣い──世界そのものの奇跡を感じさせる、詩的で豊かな映像の連なり です。カラブリアという古の土地を舞台に、消えゆくものへの惜別、生命の循環、そして未知の世 界への探求を描く彼の作品は、観る者の心に静かな驚きと深い余韻を残します。それは、現実を 超えた世界の奥行きに触れる映画体験であり、私たちを神秘とワンダーの中へと引き込むので す。 本特集では、デビュー作であり日本初公開となる『おくりもの』(4Kレストア版)、カンヌ映画祭で喝 采を浴びた『四つのいのち』、そしてヴェネチア映画祭で3冠に輝いた『地底への旅』の全長編3作 品を一挙上映します。フランマルティーノが描き出すのは、言葉を超越した「存在の映画」の極 致。目の前に広がる驚きと美しさを、ぜひ映画館で体感してください。

DIRECTOR
ミケランジェロ・フランマルティーノ (Michelangelo Frammartino)
1968年ミラノ生まれ。ミラノ工科大学建築科にて、物理空間と視覚イメー ジの関係を探求し、インスタレーション作品や短編映画を制作。建築家とし ての視座と現代美術的手法を映画に持ち込み、「スロー・シネマ」の旗手と して国際的評価を確立。対話をほとんど持たない映像言語、固定カメラに よる長回し、自然音を主体とした音響設計によって、人間中心主義を超え た独自の映画世界を構築する。カンヌ、ヴェネチア、ロカルノをはじめとす る世界の主要映画祭でも高く評価される現代映画の最重要作家の一人。