戦争末期の混乱の中で、永遠の愛を誓ったマリアの数奇な人生。
運命に翻弄されながらも逞しく生き抜く女性の姿を、
戦後ドイツの復興とともに描いたファスビンダーの代表作。

『マリア・ブラウンの結婚』
ファスビンダーの名を世界に轟かせた大ブレイク作にして究極の<女性映画>。第二次世界大戦の真っ只中、マリアは恋人のヘルマンと結婚式を挙げるが、ヘルマンはすぐに戦線に戻り行方不明になってしまう。新たなパートナーとともに戦後の混乱を乗り越えていこうとするマリアだったが……。鳴り響く銃声や爆撃音とウエディング・ドレスのコントラストが衝撃的なオープニングに始まり、鮮烈なイメージが怒涛のごとく押し寄せる究極のメロドラマ。戦争末期からドイツがめざましい復興を遂げる1950年代半ばまでの約10年間にわたるヒロインの生き様が活き活きと描かれる。波乱万丈な運命を辿るマリアを艶やかに演じたのはファスビンダー映画常連のハンナ・シグラ。本作で第29回ベルリン映画祭銀熊賞を受賞した。

監督/ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
脚本/ ペーター・メアテスハイマー、ペーア・フレーリヒ
撮影 / ミヒャエル・バウハウス
出演 / ハンナ・シグラ、クラウス・レーヴィッチュ、ギゼラ・ウーレン、クラウス・ホルム
1978 / ドイツ / カラー / 120

 


 

愛することの美しさと不条理、
生きることの絶望と希望、
今だから観てほしいファスビンダー映画。

ファスビンダーはドイツを代表する夭逝の天才映画監督。しかし、諸外国での高い評価に比べて日本国内ではあまりに知られていません。実人生は破天荒でアヴァンギャルドなイメージを持たれがちですが、その作品に触れ、インタヴューなどを読むと、驚くほどの真摯さと知性を持って創作に向かっていることに感銘を受けます。

『マリア・ブラウンの結婚』は世界的にヒットし、日本でも1980年に公開され大きな話題を集めたファスビンダーの代表作。第二次世界大戦末期から復興の兆しが見え始める約10年間のドイツの姿を、一人の女性の人生を通してドラマティックに描きます。見どころの連続で主演のハンナ・シグラの姿がひたすらにカッコいい。圧倒的な娯楽作でありながら、同時に徹底的な政治作でもあり、そして愛の物語でもある。傑作ぶりに震えがきます。

『不安は魂を食いつくす』は50年代ハリウッドのメロドラマをインスパイア元に、老齢の掃除婦と若い外国人労働者の恋愛を描きます。社会的に不利な立場にある人々を映しながら、それを社会の問題として扱うような分別くささはありません。人と人が関係することの難しさを、喜劇も悲劇も込めてただただ実直に捉える眼差しに胸を打たれます。いまだこのような映画は撮られていないし、このような美しい映画がこの世に存在していることを知ってほしい。

『天使の影』はファスビンダーの戯曲『ゴミ、都市そして死』をダニエル・シュミット監督が映画化した異色作。退廃的でアングラな雰囲気の漂う、容易く掴み得ない怪作です。ファスビンダーの描いた物語を盟友が演出することで、ファスビンダーの別の側面が見えてきます。

ファスビンダー映画に初めて出会う方は、まずは監督作の『不安は魂を食いつくす』と『マリア・ブラウンの結婚』から観ていただくことをお勧めします。そして、もっともっとファスビンダーを知りたい人には『天使の影』もご覧いただけると嬉しいです。

 


 

[ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー傑作選]
37
年の短い生涯で、強烈な個性に貫かれた40本以上もの作品を手がけ、ヴェンダース、ヘルツォークらと並んで<ニュー・ジャーマン・シネマ>の代表格と称されたライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督。この度、ファスビンダー美学の極致とも言えるふたつの監督作、『不安は魂を食いつくす』『マリア・ブラウンの結婚』、そしてファスビンダーが原作・脚本・出演を務め、スイスの名匠ダニエル・シュミットが監督した『天使の影』の三作が劇場公開。生きるが故の矛盾や絶望、愛するが故の悲しみ、思わず目を背けたくなるほどの人々の剥き出しの姿をスキャンダラスに、時に露悪的なまでに描き切ったファスビンダー。しかしそこに宿る仄かな光まで捉えた彼の眼差しは、美しい劇薬となって画一的な幸福を求める我々の心に深い傷痕を刻むだろう。

 


 

ファスビンダーはナチスから戦後に至るドイツ社会の傷を自らに刻むように多くの映画・戯曲を発表した。その生々しい時代の記録は21世紀の今になっても挑発力を失わない。むしろ我々の時代がようやくファスビンダー追いついたのかもしれない。

渋谷哲也(日本大学文理学部教授/ドイツ映画研究)

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【上映期間】

11/25(土)、26(日)、12/2(土)、3(日)、6(水)、8(金)、9(土)、10(日)、11(月)の9日間上映します。
上映時刻についてはスケジュールをご覧ください。

【料金】

一般・シニア   1,800円
25歳以下      1,300円
18歳以下      500円
早期夜割     1,300円
同作品リピート割 1,000円
福祉手帳割(同伴者1名まで割引適用)1,000円

【上映時間】

『不安は魂を食いつくす』
93分(1時間33分)
『マリア・ブラウンの結婚』
120分(2時間)
『天使の影』
101分(1時間41分)

【公式サイト】

https://fassbinder-film-2023.jp/