5/4、三宅唱監督をjig theaterにお招きしてのトーク開催決定!
三宅唱監督の長編作品すべてをお届けする特集上映です。
どうぞお楽しみに!
現代の日本の映画監督の中で一際目立つ存在である三宅唱監督。その特徴とはなんだろう。観ればわかる(そう、観ればわかる)。この作品たちには、圧倒的に 「そこに人がいる」ことが映っている。「そこに人がいる」ためには、まず「そこ」(場所・土地)がちゃんと映り、次に「人」(人物)が ちゃんと映り、そして「いる」(存在)がちゃんと映ってないと成立しない。そういうことを、他の追随を許さないほどの強度で 映画の画面に定着させているのが三宅唱監督の作品だと思う。そして「そこにいる人」には揺らぎが生じている。まだ名づけえぬ、長続きしそうにない、或いはすぐに変質してしまいそうに曖昧な、人と人との接触の中で揺らぎ、揺らぐことで物語がドライブする。じつに緩やかに。緩やかすぎて、他人はもちろん、そこに映る登場人物本人でさえ気づいていないのではと思えるほど、わずかで、確実なドライブ。そしてある時、見つめるこちらの身体が思わず動いてしまうほどの物理的な運動が画面に映しだされ、ガチッと断層が走る。揺らぎと断層により、そこが映り、人が映り、いるが 映っていたのだと気づく。観ればわかる。
三宅唱 Sho MIYAKE
1984年札幌生まれ。映画監督。一橋大学社会学部卒業。映画美学校フィクションコース初等科修了。2012年、劇場公開第1作『Playback』がロカルノ国際映画祭コンペティション部門に正式出品。音楽ドキュメンタリー『THE COCKPIT』(14)、時代劇ドラマ『密使と番人』(17)、 佐藤泰志原作小説の映画化『きみの鳥はうたえる』(18)、山口情報芸術センター[YCAM]と共同制作した『ワイルドツアー』(19)、『ケイコ 目を澄ませて』(22)を監督。その他に『無言日記』シリーズ(14-)、ビデオインスタレーション「ワールドツアー」(18)、オリジナルドラマシリーズ 『呪怨 呪いの家』(20)など。最新作『夜明けのすべて』が2024年2月劇場公開予定。
『やくたたず』
北海道の荒野を背景に、 若者たちの切実な一瞬を
美しいモノクロームの映像で切り取った長編第一作。
はじめての本格的な映画制作となった2010年のこの時点で、三宅唱がすでに三宅唱であることが存分に発揮されている恐るべき傑作。高校生3人の姿と北海道の風景が、これというしかない瞬間の連続で映し取られていく。三宅監督が自らがカメラを回していることにも驚きを感じつつ、高校卒業をひかえて何と規定されることを逃れる彼らの立ち居がたまらなく愛おしい。
〈STORY〉
高校卒業を控えたテツオたち3人は、先輩が勤める地元の防犯警備会社で バイトを始めるが……。一面雪に覆われた北海道を舞台に、ボンクラ高校生の 日常と仕事、そして彼らが巻き込まれる思わぬ事件を、ザラついたモノクロームで捉えた青春群像。村上淳、加瀬亮などの俳優に絶賛された三宅唱の初長編作。
監督・脚本・撮影・編集:三宅唱
助監督:古田晃 美術:久保田誠 録音:高柳翼 出演:柴田貴哉 玉井英棋 山段智昭 片方一予 櫛野剛一 足立智充 南利雄 © MIYAKE Sho2010
モノクロ/76分/2010
『Playback』
誰にでも立ち止まりたくなるときが、ある。
行き場を無くした男の、ある「再生」の物語。
三宅唱監督の劇場公開デビュー作。
この作品から三宅唱の映画を観て、虜になった映画ファンは数多いだろう。ジグシアターの柴田もそのひとり。とにかくこんなカッコいい画面を撮る監督が現れるなんて!とそれはまるで事件だった。現在と未来が交錯し反復する語りの構造は一見すると掴み難いが、これは俳優という職業と人生そのものについての話だとすると得も言えない感情に襲われる。
〈STORY〉
仕事の行き詰まりや妻との別居など、40歳を手前に人生の分岐点に立たされた映画俳優ハジ。だがすべてが彼にとってはまるで他人事のようだ。そんな彼が旧友に誘われ久しぶりに故郷を訪れる道中である出来事が起きる。居眠りをして目覚めると、なんと大人の姿のまま制服を着て、高校時代に戻っているのだった……。現在と過去が交錯し、反復されるその世界で、果たしてハジは再び自分の人生を取り戻せるのだろうか。
脚本・編集・監督:三宅唱 企画・プロデュース:佐伯真吾 松井宏 三宅唱 撮影:四宮秀俊 照明:秋山恵二郎 玉川直人 録音:川井崇満 助監督/整音:新垣一平 制作:PIGDOM 製作:DECADE inc. 挿入歌:Daniel Kwon 大橋好規 主題歌:“オールドタイム”大橋トリオ 出演:村上淳 渋川清彦 三浦誠己 河井青葉 山本浩司 テイ龍進 汐見ゆかり 小林ユウキチ 渡辺真起子 菅田俊 © 2012 Decade, Pigdom
モノクロ/113分/2012
『THE COCKPIT』
日常と創作は いつだって隣り合わせ
HIPHOPアーティスト OMSBとBim、その仲間たちによって
ひとつの曲が生まれるまでを追った
ユーモラスで愛おしい音楽ドキュメンタリー
愛知芸術文化センターから「身体」をテーマにした映像作品のオファーを受けて、三宅唱が選んだのは敬愛するHIPHOPアーティストの制作風景。小さな部屋の中、一曲作るだけの2日間。それだけが本当に面白い。制作をネタをディグってMPCをひたすら叩いてリリック捻って何度もミスって同じフレーズをラップを繰り返す、ヒップホップ垂涎なのだが、そうでなくてもモノづくりをしている人にはめちゃくちゃアガるものがある。とにかく楽しそうな彼らの姿には感動すら覚える。Think Good!
〈STORY〉
日本中どこにでもある小さなマンションの一室。テーブルの上には、いくつものパッドが並ぶサンプラー。その横にキーボードとターンテーブル。普段の生活の延長のようにイスに座り、 まずはレコードを選ぶ OMSB。お気に入りの音たちをサンプリングし、独特のリズムでパッドを叩きながら、理想のトラックを探っていく。Bim は OMSB の作業を見ながらからだを揺らしてみたり、新たなアイデアを 出してみたり。やがて夜がふけ、朝になり、今度はふたりで一緒にリリックを書いていく。
監督:三宅唱 プロデュース:松井宏 撮影:鈴木淳哉 三宅唱 整音:黄永昌 出演:OMSB bim Hi’Spec VaVa Heiyuu © MIYAKE Sho
カラー/64分/2014
『無言日記』
iPhoneの動画撮影機能のみを使用し、日々の記録として撮影・編集したビデオダイアリー。東京や旅先の映像に、何気ない日々の出来事、かけがえのない場所や時間、季節の移り変わりが映る。
三宅唱が日常を撮る。ほんとに些細な動画の数々なのだけど、これが驚くほど面白い。言われてみれば、映画のはじまりといわれるリュミエール兄弟の『工場の出口』や『列車の到着』にも台詞や物語はなく、だからこそ画面のなかの運動と時間が際立っている。そして、それを繋ぎ重ねる編集にこそ三宅唱の映画のマジックの真髄があるのかもしれない。自分の思い入れのある年を見て、三宅唱の日常を重ねてみるのもいいかもしれない。
〈STORY〉
三宅唱監督がWEBマガジン「boidマガジン」で継続的に発表してきた映像日記を、1年ごとにまとめた再編集版。見知らぬ街角、道端の植物、目を見張る絶景、偶然の出来事、淡々と過ぎる時間。そのすべてが分け隔てなくつなぎ合わされた映像は、見られることによって、三宅唱という一個人の日記から、誰のものでもない/誰のものでもある日記へと変容し、膨張していく。
『無言日記 2014』
撮影・編集:三宅唱 カラー/66分
『無言日記 2015』
撮影・編集:三宅唱 カラー/66分
『無言日記 2016』
撮影・編集:三宅唱 カラー/50分
『無言日記 2018』
撮影・編集:三宅唱 カラー/60分
無言日記は1作品ご覧いただくと、ほかの年代の無言日記3作品を各500円でご覧いただけます
『密使と番人』
江戸の街並も、刀によるアクションもなく、
男は冬の厳しい山のなかを歩き続ける……。
“時代劇”の枠組みにとらわれない、 誰も見たことのない新しい時代劇。
地図を届ける者とそれを追う者。ミニマルな設定でこそ発揮される三宅節。山道を歩く足音、枯葉や小枝を踏みしめる音、息切れる音、どこかから聞こえる川のせせらぎや風の音。不意にOMSBとHi’Specのビートが鳴り響く。俳諧の奥にあるのっぴきならないドラマの気配がする。
〈STORY〉
十九世紀はじめ、鎖国下の日本。開国を望む蘭学者の一派が、幕府管理下にある日本地図の写しを密かに完成させる。彼らはオランダ人にその地図の写しを渡すため、若い蘭学者の道庵を密使として出発させる。身を潜めながら、 山の中を進む道庵だが、その山の番人たちは、幕府が手配した道庵の人相書を手に山狩りを始めていた…。
監督:三宅唱 脚本:三宅唱 松井宏 撮影:四宮秀俊 照明:秋山恵二郎 録音・整音:川井崇満 助監督:野尻克己 音楽:OMSB Hi’Spec 出演:森岡龍 渋川清彦 石橋静河 井之脇海 足立智充 柴田貴哉 嶋田久作 製作:時代劇専門チャンネル・ 日本映画専門チャンネル © 時代劇専門チャンネル・ 日本映画専門チャンネル
カラー/60分/2017
『きみの鳥はうたえる』
いつまでも続く夏の夜と、曖昧な終わりの予感。
佐藤泰志の小説をもとに描き出す、 今を生きる私たちのための青春映画。
今回の特集の中では最もポピュラーで、この作品だけは配信やレンタルでも観ることができる。できるんだけど、ちょっと待ってください。絶対にスクリーンで観るべき映画なんです。『ケイコ〜』がそうだったように、しっかりと目を澄ませて身体と表情を見つめることでようやく立ち現れる複雑で繊細な関係性がそこにあり、それはおそらく映画館でしか再現されない類のものだと思います。この光の感触は、きっと忘れることができない。
〈STORY〉
函館郊外の書店で働く「僕」は、失業中の静雄と小さなアパートで共同生活を送っていた。静雄には 離れて暮らす酒飲みの母と、困ると金を無心しにいく兄がいるらしい。ある日、「僕」は同じ書店で働く佐知子とふとしたきっかけで関係をもつ。彼女は店長の島田とも抜き差しならない関係にあるようだが、その日から毎晩のようにアパートへ 遊びに来るようになる。こうして、「僕」と佐知子と静雄の気ままな生活が始まった。
脚本・監督:三宅唱 プロデュース:松井宏 撮影:四宮秀俊 照明:秋山恵二郎 録音:川井崇満 助監督:松尾崇 企画・製作・プロデュース:菅原和博 音楽:Hi’Spec 製作:函館シネマアイリス 制作:Pigdom 出演:柄本佑 石橋静河 染谷将太 足立智充 山本亜依 柴田貴哉 水間ロン OMSB Hi’Spec 渡辺真起子 萩原聖人 原作:佐藤泰志(『きみの鳥はうたえる』河出書房新社 / クレイン刊) ©HAKODATE CINEMA IRIS
カラー/106分/2018
『Wild Tour』
山口情報芸術センター[YCAM]での 約8ヶ月の滞在制作を経て完成した映画には、 山、海、10代、植物、初恋ー 「ワイルドな」成長の記録が繊細に映し出される。
「記録」から「物語」へ。映画史の大きな一歩を辿るように、三宅唱が映画未経験の中高生たちとともに脚本や演出を考え作りあげた作品。撮影も三宅唱が行い、中高生の甘酸っぱい恋する過程を繊細に大胆に映し出す。なるほど、ワイルドツアー!サクッと冒険に出よう。
〈STORY〉
ここは山口県山口市にあるアートセンター。大学1年生の中園うめは、「山口のDNA図鑑」というワークショップにファシリテーター(進行役)として参加している。参加者は、これから自分たちが暮らす街の様々な場所を歩きまわり、どんな植物が生えているのかを調べていく。ウメは中学3年生のタケとシュンを連れ「新しい種」を求めて近くの森を探索することに…。
監督・脚本・撮影・編集:三宅唱 プロデュース:杉原永純(YCAM) 撮影・編集補助:今野恵菜(YCAM) 音楽:Hi’Spec 製作:山口情報芸術センター[YCAM] 出演:伊藤帆乃花 安光隆太郎 栗林大輔 伊藤己織 髙椋優気 増田結妃 桝田七海 渡邊芽惟 渋谷圭香 河村百音 川俣実穂 福田未空 横山南 ほか ©Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM]
カラー/67分/2018
【上映期間】
4/22土、23日、29土、30日、5/1月、3水、4木、5金、6土、7日、8土の11日間
【料金】
フリーパス鑑賞券 8,400円(トーク込)
一般・シニア 1,500円
25歳以下 1,300円
高校生以下 500円
早期夜割 1,300円
同作品リピート割 1,000円
福祉手帳割(同伴者1名まで割引適用)1,000円
三宅唱監督トーク 1,000円
無言日記特別料金:無言日記を1作品ご覧いただくと、
ほかの年代の無言日記3作品を各500円でご覧いただけます
【上映時間】
・やくたたず 76分
・Playback 113分(1時間53分)
・ザ・コクピット 64分(1時間4分)
・無言日記 2014 66分(1時間6分)
・無言日記 2015 66分(1時間6分)
・無言日記 2016 50分
・無言日記 2018 60分(1時間)
・密使と番人 60分(1時間)
・きみの鳥はうたえる 106分(1時間46分)
・ワイルドツアー 67分(1時間7分)
30分前より開場します。
定刻通りに本編より上映しますので、
お時間に余裕を持ってご来場くださいませ。
【無料託児】
ジグシアターの三宅優子が上映中にお子さまをお預かりします。
詳しくは〈託児のご案内〉をご確認の上、お申し込みください。