ジグシアターが6月にお届けするのはルーマニアの鬼才ラドゥ・ジューデ監督の新作『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ』。
夫婦の個人的なビデオがネットに流出してしまった女性教師とそれに対する社会の反応をストーリーの軸に、ルーマニアの近現代史や政治の風刺など織り交ぜて、私たちの社会に溢れる偏見・偽善・軽薄さに切り込んでみせる秀逸なブラックコメディ。
正直なところ、ジグシアターとしても「これ上映しても大丈夫かしら…?」とちょっと戸惑いました笑。不快に感じる人も一定数いると思われるパンチの効いた作品だからです。けれどもこの作品の持つ、真面目な不真面目さ、ただの悪ふざけではなく徹底して真摯な悪ふざけという両義性にとどまる知性とユーモア、ある種の勇気が今の私たちに必要なのではないかと思ったのです。
ラドゥ・ジューデ監督は「この映画は、平凡なアマチュアポルノのいわゆる「猥褻」と、私たちの身の回りや近代史の至る所に溢れる「猥褻」なものとを、常に比較にするよう観客を促しています」と語ります。映画という空間のなかでしかできないやり方で「猥褻とは何か」をこの作品は一気に提示します。この野心作を私たちは不快に思うのかはたまた痛快に感じるのか。
世界での評価は非常に高く、2021年第71回ベルリン国際映画祭では金熊賞(グランプリ)を受賞しています。昨年のベルリンと言えば、濱口竜介監督の『偶然と想像』が銀熊賞(準グランプリ)を受賞した年ですが、何だったら濱口竜介監督が昨年のベスト10に選んでいたりもして、スキャンダラスなだけでなく映画表現としての強度も抜群です。
Instagramに書くにはちょっと躊躇うタイトルですが、どうか躊躇いつつも観に来てください。梅雨のジメジメを吹き飛ばす勢いの笑える映画です。みなさまのお越しを心よりお待ちしています!
[Official introduction]
2021年ベルリン国際映画祭は、冒頭のあけすけな本番セックスシーン(日本公開版は監督による検閲版)に始まる、この挑戦的なルーマニア映画『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ』に金熊賞を授与した。その後世界で大きな反響を呼び、本国ルーマニアの米アカデミー賞代表作品選出、ニューヨークタイムズが選ぶ2021年ベスト2位作品にも選出(6位は『ドライブ・マイ・カー』)されるなど、その快進撃は止まることを知らない。決して口当たりのいい映画ではないのに、世界が同時に経験したパンデミックとその後の社会の閉塞感を、“卑猥”とは何か?と改めて問いかけることで読み解こうとしたこの映画への、人々の共感が絶賛という形になった。
[Story]
ルーマニア、ブカレスト。名門校の教師であるエミは、コロナ禍の街をさまよい歩いていた。夫とのプライベートセックスビデオが、意図せずパソコンよりネットに流失。生徒や親の目に触れることとなり、保護者会のための事情説明に校長宅に向かっているのだ。しかしそこにはブカレストの街を漂流するかのように、エミの歩く姿が映し出されるだけだ。彼女の抱える不安や苛立ちは、街ゆく人々も共有する怒りと絶望であり、さらにはその街、引いては世界の感情そのもののようであった。猥雑で、汚れ、怒りを孕んだ空気が徐々に膨れ上がっていく…。
邦題:アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ
原題:Babardeala cu bucluc sau porno balamuc
監督:ラドゥ・ジューデ
2021年/1時間46分/シネスコ/カラー/ルーマニア・ルクセンブルク・クロアチア・チェコ合作/配給=JAIHO
【上映期間】
2022.6.10(金)11(土)12(日)18(土)19(日)20(月)6日間
【料金】
一般・シニア 1,800円
25歳以下 1,300円
レイトショー価格 1,300円
※レイトショーは6.10(金)と6.11(土)の最終上映
【上映時間】
106分(1時間46分)
各回30分前に開場します
【公式サイト】
https://unluckysex-movie.com