6/17 (土) から7/9 (日) までの10日間、
「追悼 ジャン=リュック・ゴダール映画祭」を上映します。
『はなればなれに』『ウイークエンド』『パッション』
『ゴダールのマリア』の4作品は6/29(木)までの上映です

6/18 (日) 19:00からは鳥取大学の佐々木友輔さんによる
特別レクチャーも開催!どうぞお見逃しなく。

ジグシアターをはじめる時から
「いつかゴダールの新作をかける日が来るのだろうか」と
震えながらも期待しつつ、昨年の訃報を聞くことになり
ついぞその機会が訪れることはなかったけれど、
今回追悼というかたちで9本ものゴダール作品を
上映できることを光栄に思います。

戸惑いをコンセプトにする jig theater のなかでも
映画史上最大の戸惑いを。


 

2022年9月13日、
ひとりの映画監督がこの世を去った。
何が革新だったのか。
何が称賛されたのか。
そして彼のいない映画はどうなっていくのか。
それでもゴダール=映画は生き続ける。

『勝手にしやがれ』で世界を驚愕させて以降、“ヌーヴェル・ヴァーグ”の旗手として作品を発表するごとに注目を浴びると同時に、そんなカテゴライズをあざ笑うかのごとく観る者を挑発し、煙に巻き、固定観念に唾を吐き続けたジャン=リュック・ゴダール。
今回、彼の膨大なフィルモグラフィの中から最も充実していた1960年代と1980年代を中心に、滅多にスクリーンでは観ることのできない全9作をセレクト。

 


 

【佐々木友輔さんによる特別講座】
6/18(日)19:00 – 20:00 参加費 ¥500
鳥取大学の佐々木友輔さんをお招きして、ゴダールの概要と上映作品についてのレクチャーを開催します。佐々木さんといえば去年上映した『コールヒストリー』の監督であり、「〇〇と映画」や「現代アートハウス入門」のガイド役としてもおなじみで、その明快な語り口のファンも数多いことでしょう。聞けばゴダールが100倍楽しくなること間違いなし!


 

 

 

『小さな兵隊』 Le Petit Soldat

60年代ゴダールを決定付けるアンナ・カリーナ時代の幕開け。アルジェリア戦争(フランスが植民地支配していたアルジェリアで54年に起こった独立戦争)について扱った作品で、対立する組織間で行われた「拷問」を批判的に描く。全ゴダール作品に共通する詩的なモノローグ、ダイアローグ、数多くの引用、斬新なカメラワーク、カット割りなどが、こんなに初期からすでに出揃っていることに驚く。ゴダールに多大な影響を受けたウォン・カーウァイ監督を逆に彷彿させる小さな傑作!

[official introduction]
極右のOAS(秘密軍事組織)およびこれと対立する組織FLN(アルジェリア民族解放戦線)の間で翻弄される男女のスパイを描いた長編第二作。60年に完成していたが、アルジェリア戦争を主題とし、両組織による拷問を批判的に描いたことで63年まで公開されなかったいわくつきの作品。アンア・カリーナが初めて出演したゴダール映画でもある。二人は本作完成後に結婚した。

1960年/脚本:ゴダール/撮影:ラウル・クタール/音楽:モーリス・ルルー/出演:ミシェル・シュボール(ブリュノ)、アンナ・カリーナ(ヴェロニカ)、ラズロ・サボ(ラズロ)

 


 

 

 

『カラビニエ』 Les Carabiniers

真正面から戦争を描いた作品。公開当時は人が入らず、ゴダールのフィルモグラフィの中でも最も渋いものかもしれない。しかし、ロベルト・ロッセリーニ(現代アートハウス入門 vol.2で上映した『イタリア旅行』の監督)の脚本によるこの寓話・風刺劇は、至る所に不条理な演出が施され、戦争の悲惨さ凄惨さを伝えることにおいて最も射程範囲の広いものになっている。

[official introduction]
題名は「憲兵たち」の意。イタリア人作家ヨッポロの同名舞台劇に基づく寓話的反戦風刺劇。前年に同劇を演出したロッセリーニが、脚本家の一人として名を連ねている。架空の国の貧しく学のない若者二人が、世界の富をわがものにできるとの甘言に釣られて「王様」からの徴兵に応じ出征、破壊と略奪の限りを尽くすが……ジャン・ヴィゴに捧げられている。

1963年/原作:ベニャミーノ・ヨッポロ/脚本:ゴダール、ジャン・グリュオー、ロベルト・ロッセリーニ/撮影:ラウル・クタール/音楽:フィリップ・アルチュイ/出演:マリノ・マゼ(ユリース)、アルベール・ジュロス(ミケランジュ)、ジュヌヴィエーヴ・ガレア(ヴェニュス)、カトリーヌ・リベイロ(クレオパトル)

 


 

 

『はなればなれに』 Bande à part
6/29(木)まで上映

今回の特集で初期ゴダールの作品を1つ観るなら、これを選べばまずは間違いないでしょう。「男と女と車が1台あれば映画はできる」と言ったゴダールらしさ満載の青春映画。ジャームッシュやタランティーノなど錚々たる監督がハマるのもうなずけるキレのよさ!アンナ・カリーナがとにかく可愛い。3人が並んで踊るダンスシーンと、ルーブル美術館を走り抜けるシーンは有名過ぎるほど有名。必見!!

[official introduction]
先頃邦訳が刊行されたアメリカ人作家ヒッチェンズの小説に基づく作品。若者二人組とナイーヴな娘が織りなす三角関係と彼らの犯罪計画を軸とした、奔放な悲喜劇。物語の内と外を自在に出入りする、ゴダール自身の声によるナレーションもユニーク。タランティーノ、ベルトルッチ、ハートリーら本作への偏愛を隠さない映画作家やミュージシャンは数多い。

1964年/原作:ドロレス・ヒッチェンズ/脚本:ゴダール/撮影:ラウル・クタール/音楽:ミシェル・ルグラン/出演:クロード・ブラッスール(アルチュール)、アンナ・カリーナ(オディル)、サミー・フレイ(フランツ)

 


 

 

『ウイークエンド』  Week-end
6/29(木)まで上映

映画史上最長と言われる300メートルの交通渋滞を長回しで捉えたシーンが圧巻。政治と暴力の赤色が脳裏に焼き付く。人々が自動車に依存し命を落とす世界の終末、資本主義の終焉をラディカルに描いたブラックコメディ。実は最もイマっぽいかもしれないパンチの効いた作品。格好いい!けれど刺激は強めです。

[official introduction]
各々愛人がいて、密かに互いを殺す機会をうかがうプチブル夫婦。二人は遺産相続のため妻の実家へと車を走らせるが、この長旅はトラブルや奇妙な人物たちを通じて次第に混沌とした非現実的なものへと変貌していく……性と政治の季節に作られたポストモダン的黒い喜劇。交通渋滞を描いたくだりの移動撮影は、映画史上最も長いものの一つだとされる。

1967年/脚本:ゴダール/撮影:ラウル・クタール/音楽:アントワーヌ・デュアメル/出演:ジャン・ヤンヌ(ロラン)、ミレーユ・ダルク(コリーヌ)、ジャン゠ピエール・カルフォン(FLSOの指導者)

 


 

 

『パッション』 Passion
6/29(木)まで上映

ゴダールが何度となくテーマにしている「映画を作ること」自体を描いた作品。労働、性愛、映画をキーワードに物語は複雑に入り組んでいるが、基本的にはドタバタコメディだと思えば大丈夫!カメラワークや光の扱いの超絶技巧に驚きつつ、従来の映画とは全く異なる映画文法を生み出した80年代ゴダールを堪能しよう!

[official introduction]
欧州古典絵画の数々を活人画として再現した芸術映画製作に取り組む野心的ポーランド人監督。国際的製作班による「(完成しない)映画作りを描いた映画」としての側面を備える本作は、夏の陽光に満たされたかつてのゴダール映画『軽蔑』を冬の光の中で再創造する。ここでも物語は芸術(創造行為)と生活(性や金銭を巡る諸問題)の間を往還するだろう。

1982年/脚本:ゴダール/撮影:ラウル・クタール/ヴィデオ撮影:ジャン゠ベルナール・ムヌー/出演:イザベル・ユペール(イザベル)、ミシェル・ピコリ(ミシェル)、ハンナ・シグラ(ハンナ)

 


 

 

『カルメンという名の女』 Prénom Carmen

ジグシアター柴田のベスト・オブ・ゴダールであり、オールタイム・ベストの一本。オペラにもなった短編小説『カルメン』をモチーフに、今回の特集の中では最も物語がわかりやすい作品かもしれません。ゴダールがゴダール役としての出演しているのにもご注目。彼は画面に映っているだけでとんでもなく面白くて魅力的。カットバックする弦楽四重奏の演奏シーンや、トム・ウェイツの曲がかかる名場面には思わず感涙。本当にめちゃくちゃ格好よくておすすめです!

[official introduction]
テロリストと思しき集団と共に銀行を襲撃する美貌の娘カルメンと、彼女と恋に落ちた警備員ジョゼフがたどる数奇な運命。そこにカルメンのおじで精神病院に入院中の元映画監督ジャン(ゴダール自身が演じている)およびベートヴェンの弦楽四重奏曲を練習する演奏家集団が交差しつつ、悲喜劇的なラストですべてが合流する、ゴダール流“カルメン映画”。

1983年/脚本:アンヌ゠マリー・ミエヴィル/撮影:ラウル・クタール、ジャン゠ベルナール・ムヌー/出演:マルーシュカ・デートメルス(カルメンX)、ジャック・ボナフェ(ジョゼフ)、ミリアム・ルーセル(クレール)

 


 

 

『ゴダールのマリア』 Je vous salue, Marie
6/29(木)まで上映

2部構成になっていて、前半のアンヌ゠マリー・ミエヴィル監督作品の落ち着いたトーンから一変、後半のゴダール監督作品のテンションの高さたるや!聖母マリアの処女懐胎を現代スイスの女子学生に置き換えたというやっぱりドタバタコメディ。天使も出てくるし。宇宙の起源に偶然があったことと女性の身体の神秘を重ね合わせたゴダール流フェミニズム作品。『カルメンという名の女』と対になった映画の女性の表象。

[official introduction]
聖母マリアをスイスの女子学生マリーへと変換し、イエスの処女生誕の物語を現代に置き換えて語り直した、ある意味挑発的な作品。カトリックの教義に言及しつつ、マリー役のルーセルが全裸となる場面があるためヨハネ・パウロ二世に批判され、上映禁止措置がとられた国もある。また抗議活動や爆破予告の対象となった劇場もあり、各国で物議を醸した。

1985年/脚本:ゴダール/撮影:ジャン゠ベルナール・ムヌー/編集:アンヌ゠マリー・ミエヴィル/出演:ミリアム・ルーセル(マリー)、ティエリ・ロード(ジョゼフ)、ジュリエット・ビノシュ(ジュリエット)

 


 

 

『ゴダールの探偵』 Détective

探偵映画でありグランドホテル形式の群像劇。複雑に絡まった伏線が見事に解決、されているのかどうかまったくわからないのがゴダール流。癖の強いキャラクターたちとともに、物語も映像も音もバラバラに進行し、真実はいつもひとつどころか、そもそもの事件さえもなんだったのか。にも関わらず、ひとつひとつのシーンはジャンル映画の名場面集と言えるほどに充実。ひょっとすると今大ヒット中の国民的少年探偵映画と併せて観るのが楽しいかもしれない笑。

[official introduction]
探偵と刑事、ボクシング関係者、飛行士夫妻、老いたマフィアらが滞在中のホテルで交差する姿を、スター俳優を起用して描いた犯罪群像悲喜劇。『マリア』の完成資金を稼ぐためにゴダールが引き受けた企画で、カサヴェテス、イーストウッド、ウルマーに捧げられているのもそれぞれ商業的要請の中で見事な犯罪劇を撮った彼らへのオマージュと受け取れる。

1985年/脚本:アラン・サルド、フィリップ・セトボン、ゴダール、アンヌ゠マリー・ミエヴィル/撮影:ブリュノ・ニュイッテン、ピエール・ノヴィオン、ルイ・ビイ/出演:ジャン゠ピエール・レオ(イジドール)、ジョニー・アリディ(ジム)、ナタリー・バイ(フランソワーズ)

 


 

 

『ゴダールの決別』 Hélas pour moi

ゴダールの全フィルモグラフィの中でも頂点といえる、信じがたいほど美しい映像と音。神話的モチーフを現代スイスに置き換えた悲喜劇であるが、おおよそ話を筋を辿るのは不可能。いっそ筋を追うのは諦め、ある種の詩だと捉えて、前人未到の映画の境地を堪能しよう。『アネット』と同じカロリーヌ•シャンプティエの撮影が全カット格好良く、ドイツの音楽レーベル「ECM」の透き通ったクラシック音源が拮抗する。最も劇場で体験するべき逸品です!

[official introduction]
ある男がスイスの小村で数年前に起こった出来事を調査する。一連の回想を通じて明らかになるのは、夫が出張中、妻のもとに夫の姿を借りた神が訪れた、という摩訶不思議な話だった。ギリシャ神話中のゼウス神が夫に化けて人妻と時を過ごす伝説に想を得た、人間の欲望、苦悩、歓びを巡る真実を経験したいとの神の願望を巡る物語。シャンプティエの撮影と相まって、最も美しいゴダール映画の一本と評される。

1993年/脚本:ゴダール/撮影:カロリーヌ・シャンプティエ/出演:ジェラール・ドパルデュー(シモン)、ロランス・マスリア(ラシェル)、ベルナール・ヴェルレー(アブラン)

 

上映スケジュール・予約はこちら

【上映期間】

2023/6/17土、18日、21水、24土、25日、26月、29木、7/1土、8土、9日の10日間

【料金】

一般・シニア   1,800円
25歳以下     1,300円
高校生以下     500円
同作品リピート割 1,100円
福祉手帳割(同伴者1名まで割引適用)1,000円
※今回は全作品通し券の販売はありません

【上映作品】

『小さな兵隊』 88分 (1時間28分)
『カラビニエ』 80分 (1時間20分)
『はなればなれに』 96分 (1時間36分)6/29(木)まで
『ウイークエンド』 104分 (1時間44分)6/29(木)まで
『パッション』 88分 (1時間28分)6/29(木)まで
『カルメンという名の女』 85分 (1時間25分)
『ゴダールのマリア』 107分 (1時間47分)6/29(木)まで
『ゴダールの探偵』 98分 (1時間38分)
『ゴダールの決別』 84分 (1時間24分)