ジグシアターの4月の上映作品は、レオス・カラックス『アネット』!
愛の大渦に呑み込まれる、ダークファンタジー・ロック・オペラ!唯一無二の監督カラックスのとてつもない傑作、必見です。

 


 

私たちは日常生活で自らの感情を高らかに歌いあげたりしない。だから登場人物たちが歌って踊って心情を吐露するミュージカルには、リアリズムを逸脱した過剰さがともなう。その過剰さは観客をどこに連れていこうとするのか。

『アネット』が描くのは幸福で美しいばかりの世界ではない。アダム・ドライバー演じるヘンリーの禍々しい存在感は、ミュージカルという一見楽しげなものに対する観客の期待を宙吊りにし、全ての台詞がその場で(事前のレコーディングではなく!)歌われる感情表現は、登場人物たちの繊細な内面を画面から読み取ろうと努力する観客の眼差しをすり抜ける。ミュージカルの過剰さはすべてを露わにし、すべてを差し出そうとする。そんなことはできるわけがないというのに。

「ミュージカルは映画を、ほぼ文字通り別次元のものにする。時間、場所、そして音楽、それによって素晴らしい自由が生まれるんだ」とレオス・カラックスは語る。我々がなんとなく映画だと感じているものを解放し、まったく別の可能性を示そうとしているのだ。

レオス・カラックスはアートハウス映画界のスターである。日本で80年代から始まったミニシアター/アートハウスムーブメントは、監督の名前で映画を観に行く”作家主義”をもたらした。まずヴィム・ヴェンダース、次にジム・ジャームッシュ、そして23歳の若さで最高の賛辞を浴びながらレオス・カラックスという監督がデビューした。映画と人生が重なるかのように生き、映画という島に住むことを望み、「その島に眠る死者達に時々名誉を返してやるように」ぽつりぽつりと映画を作り続けてきたカラックスの、8年ぶりの新作が『アネット』だ。

『アネット』は、全く新しい映画のようでいて、さも当然の古典とでもいうような顔をした大胆不敵な映画だ。この奇跡のような傑作が、疫病や戦争に傷つきざわめく2022年の我々に贈られたことを幸運に思う。

 


 

[Official introduction]
レオス・カラックスは唯一無二の監督である。彼の映画は誰の作品にも似ていない。まるで流れに逆行するかのように一作ごとに作風や文体を変えるので、自分自身の映画にすら似ていない。その物語はいつもどこか神話のようでもあり、説明可能なことと不能なことが混ざり合い、謎に答えはない。そのときどきに作者が抱えていた思考や感覚が不思議な夢のような形で物語られるのだ。

[Story]
ロサンゼルス。 攻撃的なユーモアセンスをもったスタンダップ・コメディアンのヘンリーと、国際的に有名なオペラ歌手のアン。“美女と野人”とはやされる程にかけ離れた二人が恋に落ち、やがて世間から注目されるようになる。だが二人の間にミステリアスで非凡な才能をもったアネットが生まれたことで、彼らの人生は狂い始める。

 

 

邦題:アネット
原題:ANNETTE
監督:レオス・カラックス
出演:アダム・ドライバー、マリオン・コティヤール、サイモン・ヘルバーグ
原案・音楽:スパークス
歌詞:ロン・メイル、ラッセル・メイル & LC
2021年/2時間20分/1.85:1/カラー/仏・独・ベルギー・日・共同製作/配給=ユーロスペース

上映スケジュール・予約はこちら

【上映期間】

2022年4月16日(土)17日(日)24日(日)25日(月)28日(木)29日(金)30日(土)5月1日(日)

【料金】

一般・シニア  1,800円
25歳以下  1,300円
レイトショー価格  1,300円
(レイトショーは25月、28木の最終上映)

【上映時間】

140分(2時間20分)
各回30分前に開場します

【公式サイト】

https://annette-film.com