この映画は狂っている。
いや、この世界がそもそもデタラメで狂っているのだと突きつけてくる。
もはや恐怖の対象すら存在しない境地に黒沢清の怖さは達してる。
ひたすらに圧倒的な画面と音だけが、私たちのすぐ隣の日常にチャイムを鳴らす。

3日間限定の特別上映で、黒沢清監督の新作をお届けします。

 

ジグではおそらく初のホラー映画。
怖いのが苦手な方からよく「何系の怖さですか?」と質問があります。幽霊系なのかスプラッター系なのか急に驚かされる系なのか人間が怖い系なのか。これまでにホラー映画を観て、これはイケるけどこれはダメだなど、怖いもののジャンル分けがあるからこその質問だと思います。ただ、『Chime』にはハッキリとしたジャンルがありません。むしろジャンルやカテゴリーを次々に崩していくような壮快さがあります。不気味な空気に浸されながらも、自分が何に怖がってるのかさえはっきりとはわからないそんな怖さがあるのです。ひとつだけ言えることといえば、とんでもなく面白いです。人によっては笑いが止まらないかもしれません。観終わったあと爽やかな気持ちにさえなるかもしれません。

黒沢清監督といえば、濱口竜介監督の師匠筋にあたる人物で、『悪は存在しない』をご覧になった方は、ああ、なるほど、師匠ヤバいな!、と感じることでしょう。今年は黒沢清イヤーで、フランスが舞台のクライムサスペンス『蛇の道』、菅田将暉主演で話題作のサスペンススリラー『Cloud』、そして『Chime』と立て続けに3本も新作を発表しています。
45分と小気味良い長さで黒沢清のエッセンスがギュウっと濃縮されているので、往年の黒沢清ファンも初めましての方もきっと楽しんでいただける傑作です。ハロウィン前のひとときに『Chime』に出会っていただけるとうれしいです!



 

「CURE キュア」「回路」「ドッペルゲンガー」などのサスペンス、ホラー作品でも知られる黒沢清監督が手がけたオリジナルの中編作品『Chime』。「自由に作品を制作してほしい」というオーダーから作られたのは、ホラーでもサスペンスでもない、どのジャンルにも属さないながら、極めて純度の高い“黒沢清”らしさ溢れる作品だ。あるチャイムの音をきっかけに、料理教室で講師を務める主人公の日常に異変が起こるさまを描く。「映画の中の三大怖いものを詰め込んだ」という本作は、今年の第 74 回ベルリン国際映画祭ベルリナーレ・スペシャル部門に出品され場内ではスタンディングオベーションを浴び話題を呼んだ。名バイプレイヤーとして数多くの作品に出演してきた吉岡睦雄が黒沢清監督作品で初主演を飾り、第74回ベルリン国際映画祭ワールドプレミア上映では、満席の会場から熱狂的に迎えられ、第48回香港国際映画祭でも上映され人気を博した。何が聞こえたのか、それはリアルなのかそれとも妄想なのか、ありふれた日常にうごめく異様な恐怖に、誰もが唖然とし囚われる。

[Story]
料理教室の講師として働いている松岡卓司。ある日、レッスン中に生徒の 1 人、田代一郎が「チャイムのような音で、誰かがメッセージを送ってきている」と、不思議なことを言い出す。事務員の間でも、田代は少し変わっていると言われているが、松岡は気にすることなく接していた。 しかし別の日の教室で、田代が今度は「僕の脳の半分は入れ替えられて、機械なんです」と言い出し、それを証明するために驚くべき行動に出る。田代の一件後のある日、松岡は若い女性の生徒・菱田明美を教えていた。淡々とレッスンを続ける松岡だったが、丸鶏が気持ち悪いと文句を言う明美に、彼は――。 松岡の身にいったい何が起きたのか。料理教室で、松岡の自宅で、ありふれた日常に異様な恐怖がうごめき始めたのだった…。

 

監督・脚本:黒沢清
出演:吉岡睦雄、小日向星一、天野はな、安井順平、関幸治、ぎぃ子、川添野愛、石毛宏樹、田畑智子、渡辺いっけい
配給:Stranger
©Roadstead
2024年製作/45分/R15+/日本

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【上映期間】

10/26(土)、27(日)、28(月)の3日間

【料金】

特別興行にて一律料金1,500円
(各種割引はありません)

【上映時間】

45分

【公式サイト】

https://roadstead.io/chime/