ジグシアターの5月の上映作品は、ロレンツォ・マトッティ『シチリアを征服したクマ王国の物語』。可愛いけれど可愛いだけじゃないクマたちの世界、大人にも子どもにもみんなに楽しんでもらえる作品です。

子どもから大人まで楽しめるようなアニメーション作品を上映したいなと開館以来思っていたジグシアターですが、ぜひ観て欲しい！と思う映画がようやく見つかりました。

アニメーションといえばアメリカ製のディズニーやピクサーやマーベル、日本製のジブリやマンガ原作のものが世界的にも有名ですが、そのどちらとも違うヨーロッパ独自の空気をまとったアニメーションを作ろうと試みている一人が、イタリア生まれフランス在住のロレンツォ・マトッティです。
マトッティは大学で建築を学んだあと、イラストレーターとして「ザ・ニューヨーカー」や「ル・モンド」誌で活躍、グラフィックノベル（漫画）の分野でも賞を受賞しているマルチタレント。鮮やかでみずみずしい色彩感覚と表現力が国際的にも高く評価されています。

「シチリアを征服したクマ王国の物語」はイタリアを代表する作家ティーノ・ブッツァーティが1945年に発表して以来ロングセラーとなっている同名の児童文学を原作としています。第二次世界大戦の時代に描かれたこの小説は、戦い、独裁者、民衆の心理など、当時の世相が反映されています。単純ではなくかわいいばかりでもないクマたちの活躍が描かれ、年齢を問わず広く楽しめる作品として愛されてきました。

今回は字幕版とともに日本語吹替え版を多めに上映します。個人的には海外アニメーションでもその国の言葉の音やリズムを味わうために字幕版で観るのが好きなのですが、この作品の吹替えは柄本佑さん、伊藤沙莉さん、リリー・フランキーさんの声の演技が素晴らしくて、日本語話者にとってはより親しみやすく理解しやすい仕上がりになっています。画面の隅々まで堪能できる吹替え版と、作品本来の音を味わえる字幕版、それぞれの良さをお楽しみいただけると嬉しいです。

本作は文部科学省特別選定（少年・家庭向き）、東京都推奨映画、映画倫理機構年少者映画審議会推薦作品などに選定されていますので、お子さま連れのご家族にも安心してご覧いただけます。（ジグ家の3歳半の子どもも楽しんで観ることができました）

小さな子どもたちも安心して見ていただけるように、少し明るめで小声のお話OKの［キッズ上映］の時間も5回ありますので、ぜひご利用ください〜

［Official introduction］
20世紀イタリア文学を代表する作家ディーノ・ブッツァーティが1945年に発表した原作は、人間をクマになぞらえ、普遍的な教訓も語っている。暴君を倒した解放者として迎えられた新王の目はいつしか曇り、王国の混乱へと転調する示唆に飛んだ『シチリアを征服したクマ王国の物語』。フランス在住のイタリア人アーティスト、ロレンツォ・マトッテ監督は、建築学と伝統の西洋美術に裏打ちされた確かな画力と、赤・緑・青の色彩のグラデーションが特徴的だ。彼の中に息づく2Dならではの映像を、絵画や映画に影響を受けたグラフィカルな表現でダイナミックに躍動させ、観客を物語の世界に引き込んでゆく。自分自身のアイデンディを見つめることと、異なる文化との共存、共生の難しさと大切さを、興奮と感動の中に描き出来した珠玉作がスクリーンに登場します。

［Story］
とおいむかし、シチリアの古代の山奥でクマの王レオンスと息子トニオは平和に暮らしていた。ところがトニオが猟師に連れ去られたために、レオンスは息子を探し、仲間とともに雪山を下りて人間の街へ……。山々に囲まれたクマの里の牧歌的な風景は、サスペンスが加速するにつれ、色鮮やかに輝き出す。雪山を滑り降りるクマ軍団の躍動感！魔法使い、人喰いトロル、化け猫、古城の幽霊……。レオンスたちが立ち向かう冒険に胸踊らされ、溢れる詩情に酔わされる82分！

監督・グラフィックデザイン：ロレンツォ･マトッティ
脚本：トマ･ビデガン／ジャン=リュック･フロマンタル／ロレンツォ･マトッティ
製作：クリストフ･ヤンコヴィッチ／ヴァレリー･シェアマン
音楽：ルネ･オーブリー
編集：ナッシム･ゴルジ･テラーニ／ソフィー･レンヌ
制作プロダクション：プリマ・リネア・プロダクションズ
アニメーション･スタジオ：3.0 studio
日本語翻訳：井村 千瑞
提供：トムス・エンタテインメント、ミラクルヴォイス
配給：ミラクルヴォイス
後援：在日フランス大使館／アンスティチュ・フランセ日本

フランス・イタリア合作／2019年／カラー／82分／ビスタサイズ／5.1ch／フランス語／原題：LA FAMEUSE INVASION DES OURS EN SICILE

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