秋のジグシアターは「SHE by HER 彼女による彼女」と題した企画上映をお届けします。

2022 年は日本で待望されていた女性監督の作品が相次いで公開される年となりました。なかでも、バーバラ・ローデンの『ワンダ』、シャンタル・アケルマンの『ジャンヌ・ディエルマン、 ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』、アニエス・ヴァルダの『冬の旅』という3作 は、その輝きと希少性ゆえに映画史のなかで宝石に例えられるほどの傑作であり、女性監督が女性を描いているという共通点があります。フェミニズムの文脈を持ち出さなくても十分に魅力的なこの映画たちを前にして、なぜ女性というくくりで企画上映を行うのか。残念ながら映画史においても現代社会においても、女性というだけで不遇な立場におかれることが少なくありません。そして、この3つの作品が扱うのは「気にも留められていない人物」の「気にも留められていない行為」であり、それは主人公たちが女性であることと切り離すことはできません。髪にカーラーを巻いたままのワンダ、ジャガイモをひたすら剥くジャンヌ、汚れた爪のモナ。「彼女による彼女」を私たちはいま見つめることになります。

 


 

ワンダ
バーバラ・ローデン

WANDA
Barbara Loden

バーバラ・ローデン監督・脚本・主演のデビュー作にして遺作となった『ワンダ』。1970年ヴェネツィア国際映画祭最優秀外国映画賞を受賞したものの、アメリカ本国 ではほぼ黙殺され、世界中の映画人たちから「忘れられた小さな傑作」と熱狂的に支 持される。70年 代アメリカ・インディペンデント映画の道筋を開いた奇跡の映画。
[STORY] ペンシルベニア州。ある炭鉱の妻が、夫に離別され、子供も職も失い、 有り金もすられる。少ないチャンスをすべて使い果たしたワンダは、薄暗いバー で知り合った傲慢な男といつの間にか犯罪の共犯者として逃避行を重ねる…。

監督・脚本:バーバラ・ローデン
撮影・編集:ニコラス T・プロフェレス
照明・音響:ラース・ヘドマン
出演:バーバラ・ローデン、マイケル・ヒギンズ、ドロシー・シュペネス、ピーター・シュペネス、ジェローム・ティアー
1970年/アメリカ/カラー/103分 ©1970FOUNDATIONFORFILMMAKERS  配給:クレプスキュールフィルム

 

 

 


 

ジャンヌ・ディエルマン、ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地
シャンタル・アケルマン

Jeanne Dielman, 23, quai du Commerce, 1080 Bruxelles
Chantal Akerman

シャンタル・アケルマンが25歳 のときに発表し世界中に衝撃を与えた本作は、 ベルギーのアパートの部屋に定点観測のごとく設置されたカメラによって、 これまでの映画では不可視であった平凡な主婦の「家事」の様子を映し出す。 執拗なまでの日常の描写は時間の経過を体感させ、反日常の訪れを予感させる。
[STORY] ジャンヌは思春期の息子と共にブリュッセルのアパートで暮らしている。湯を沸かし、ジャガイモの皮を剥き、買い物に出かけ、“平凡な” 暮らしを続け ているジャンヌだったが…。

監督・脚本:シャンタル・アケルマン
撮影:バベット・マンゴルト
出演:デルフィーヌ・セイリグ、ジャン・ドゥコルト、ジャック・ドニオル=ヴァルクローズ
1975 年 / ベルギー・フランス / カラー / 200 分 ©Chantal Akerman Foundation  配給:コピアポア・フィルム

 


 

冬の旅
アニエス・ヴァルダ

Sans toit ni loi
Agnès Varda

『冬の旅』は 11/12〜上映します

フィクションとノンフィクションを自由に行き来して数多く傑作を遺したアニエス・ ヴァルダの、劇映画の最高傑作と言われる『冬の旅』。1985 年ヴェネチア国際映 画祭で金獅子賞を受賞した本作は、屋根もなく法もなくただひたすらに漂流し、 自由と孤独の果てに亡くなった若い女性の姿が我々の生きる社会を映し出す。
[STORY] フランス片田舎の畑の側溝で凍死体が発見される。遺体は18 歳のモナ という少女だったがそれ以外に彼女のことを知る由もない。カメラは彼女が死に 至るまでの数週間の足取りを、彼女が路上で出会った人々の語りから辿る…。

監督・脚本・共同編集:アニエス・ヴァルタ
撮影:パトリック・ブロシェ 音楽:ジョアンナ・ブルゾヴィッチ
出演:サンドリーヌ・ボネール、マーシャ・メリル、ステファン・フレイス、ヨランド・モロー
1985年/フランス/カラー/105分  ©1985Ciné-Tamaris/filmsA2  配給:ザジフィルムズ

 

 


 

上映スケジュール・予約はこちら

【上映期間】

2022/11/4(金) 5(土) 6(日) 12(土) 13(日) 14(月) 16(水) 17(木) 19(土) 20(日)の10日間

【料金】

一般・シニア   1,800円
25歳以下     1,300円
中・高校生    1,000円
早期夜割     1,300円
同作品リピート割 1,000円
全作品鑑賞券   4,200円

【上映時間】

『ワンダ』 103分
『ジャンヌ・ディエルマン、ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』200分
『冬の旅』105分