10/10(金)、12(日)、13(月祝)の3日間、小宮雄貴監督の『TRUE KYOHEI SAKAGUCHI SHOW 坂口恭平生活』を上映します!

この映画には坂口恭平が、坂口恭平という人間の生活がずっと映っています。けれど、坂口恭平のことを知っているとか知らないとか、めっちゃ好きとかちょっと苦手とかはほとんど関係ありません。ひとりの人間の日常の時間を追うだけのこの映画が、人類にとって重要な様々な課題を提示し続けていることに、どうか驚いてもらいたい。そこにとても素晴らしい映画があるということを、どうか信じて観に来てもらいたい。
監督は小宮雄貴。坂口恭平の能弁な語りに、はあ、と軽く相槌を打ちながら、客観視するでもなく神格化するでもなく、絶妙な距離感のまま、実に多角的に複層的に「ひとが生きることとはどういうことか」を映し出します。

なぜ人は鬱になるのか?
自殺してしまうのか?
とても重いテーマです。

なぜつくり続けるのか?
いのっちの電話に出続けるのか?
生きることのよろこびとさびしさが重なります。

ふと、汽水空港のモリテツヤが口にする「人生のジューシーさ」という言葉が浮かびました。坂口恭平とモリテツヤはぜんぜん違う人間ですが、全人類のためにこの世界をなんとかしようと悪戦苦闘している姿を見ていると、この二人が重なって見える人も少なくないように思います。
10月11日(土)、汽水空港の10周年を祝う『一斉着陸』という祭りが行われます。そこに坂口恭平も着陸します。汽水空港のすぐそばで戸惑いを案内してきた私たちが、jig theaterとしてこの祭りのためにできるたったひとつのことが『TRUE KYOHEI SAKAGUCHI SHOW 坂口恭平生活』を上映することだと思いました。

TRUEでありつつSHOWでもある生活とは?
そのタイトルの妙を胸に、『一斉着陸』の前に観るも良し、後に観るも良し。特別緊急着陸するこの映画を、どうかたくさんの人に目撃してもらえることを心の底から願っています。

 


 

[Introduction]

建築家、作家、画家、音楽家など、多岐にわたる活動をおこなう坂口恭平の日常と創作を追ったドキュメンタリー作品『TRUE KYOHEI SAKAGUCHI SHOW 坂口恭平生活』。
1978年熊本県生まれの坂口恭平は、路上生活者の家を撮影した写真集『0円ハウス』の刊行や、東日本大震災後に「新政府」樹立を宣言した『独立国家のつくりかた』など、数多くの著書で知られています。また、自身が躁うつ病であることを公言し、2012年より自身の電話番号(09081064666)を公開し、希死念慮を持つ人々からの電話相談”いのっちの電話”を続けています。
本作は、監督の小宮雄貴が2023年に坂口恭平の個展を訪れ、ライブの撮影をしたことをきっかけに始まった長期密着の記録です。熊本での日常生活や各地での展示やイベントの活動を収めた映像はすべて、編集なしの撮って出しでYouTubeで公開されてきました。そして今回、劇場公開に向けて165分の映画作品として再構成されました。
撮影期間中、深い鬱による撮影中断の時期を経て、坂口恭平は幼年期以前から抱える根源的な「さみしさ」と向き合い、新たな言葉を生み出していきます。
この作品は、一人の人間の内面で起こる創造のプロセスを克明に捉えるとともに、「今を生きる人々のさみしさ」に観客自身が向き合うきっかけをもたらす、稀有な映画となっています。
そして、そこに確かな希望の光を感じるのです。

 


 

[監督のコメント]

なぜ自分は坂口恭平を撮っているのか、坂口恭平を撮るのは自分でいいのか、坂口恭平を編集することはできるのか。尽きない自問自答の日々の中で、なぜあの瞬間を撮らなかったのかや逆になぜ撮ってしまったのかという後悔から自己否定が始まり、苦しくなるときもありましたが、そんな自分を助けてくれたのも撮影した恭平さんの映像でした。

私塾”academy”の生徒たちに「決めたことを一つ実現するまでやる、多分それができてないんよ」という言葉を、自分も一期生のつもりで間に受けて、一つの形にすることができました。「作ると次が出てくる」ということもどこかで見た恭平さんの言葉でしたが、7月の津山での上映会直後、再びカメラを向けるべきタイミングが訪れました。

恭平さんは被写体でありながら、人生の師でもあり、一方で無邪気に笑い遊ぶ姿は子供のようにも映ります。同時にその無邪気さは彼の深淵と切り離せないものでもあるということを少しずつ知っていきました。時に深い鬱に潜り、死にたい気持ちに耐えながら、変化を恐れずに自分と向き合う坂口恭平の生活は、今ここで生きているという忘れがちな奇跡を思い出させてくれます。

小宮雄貴

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【上映期間】

10/10(金)、12(日)、13(月・祝)の3日間

【料金】

一般・シニア   1,800円
25歳以下      1,300円
18歳以下      500円
同作品リピート割 1,000円
福祉手帳割(介助者1名まで割引適用)1,000円

【上映時間】

165分(2時間45分)