台湾ニューシネマの旗手・侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の
初期の傑作にして代表作とされる2作品、『恋恋風塵』と『童年往時 時の流れ』をお届けします。

 


 

自分自身をつぶさに理解できれば、他者のこともはっきりと見えるようになる。つまり、人が自分とまったく異なる存在だということが見えてくるのです−。
台湾ニューシネマの旗手として世界的に高く評価され日本にも多くのファンを持つ侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督が、自らの映画について語った言葉です。今回上映するのは、侯孝賢監督の初期の傑作にして代表作とされる2作品。『童年往時』(1986)は監督自身の1950~60年代の経験を、『恋恋風塵』(1987)は脚本家・呉念眞(ウー・ニエンチェン)の1970年代の記憶をもとに描かれています。台湾が大きく変化を遂げた激動の時代、侯孝賢は社会を直接語るのではなく、季節の光の移ろい、汽車の音、祖母の手の動きといった、身近でささやかな出来事のなかに時の流れを見出しました。2025年の鳥取で、まったく異なる場所と時代に生きる私たちがこの映画を観て、なぜ懐かしさや寂しさを覚えるのか。それは、台湾の歴史とそこに生きた人々の想いが、言葉にならないほど美しく儚い情緒となって、遠く暮らす私たちにも静かに語りかけてくるからかもしれません。「映画史上、最も美しい光を撮る監督は誰か」と問われれば、幾人かの名を思い浮かべながらも、やはり「侯孝賢」と答えたくなる。そして、散歩の途中や旅先でふとした風景や光に出会ったとき、「あ、侯孝賢の映画みたいだ」とつぶやいてしまう。この映画の風景はそれほどまでに人を魅了し、ほとんど愛のようにさえ感じます。その戸惑いはいつか見た忘れえぬ光景として残り、これからの人生と共にある。

 


 

恋恋風塵(れんれんふうじん)
Dust in the Wind

風の中の塵のように、はかない恋。青春の痛みが、胸に刺さる。

台湾北部の山あいの故郷から台北へと働きに出た、ふたりの青春を静かなまなざしで見つめる。都会と地方の距離、時代の変化を背景に、日常の風景や人の気配を丁寧にすくいとり、ひとつの時代の記憶を観る者の心に刻みつけた。各国で高い評価を受け、日本にも世界にも多くのファンを持つ名作。
[STORY]鉱山の村で育った幼なじみの阿遠(アワン)と阿雲(アフン)は、共に貧しい家計を助けるため、中学卒業後は台北に出て働く。慣れぬ都会暮しの中、互いに励まし合うふたりにいつしか淡い恋情が芽生え始めるが、やがて…。
【第23回金馬奨 最優秀撮影賞・最優秀音楽賞】
【第 9回ナント三大陸映画祭 最優秀撮影賞・最優秀音楽賞】

提供:竹書房

 


 

童年往事 時の流れ(どうねんおうじ)
The Time to Live and the Time to Die

流れゆく時のなかで家族の肖像を映し出す。静謐な郷愁を湛えた侯孝賢の自伝的傑作。

50年代から60年代の激動の台湾を舞台に、少年の成長と家族の日常をめぐるささやかな出来事で綴る。ロングショットで映し出される、静謐で美しい台湾の生活風景と自然光の美しさが各国の映画祭で絶賛され、台湾ニューシネマを代表する監督として侯孝賢の名を世界に知らしめた代表作。
[STORY]主人公の阿考(アハ)は1947 年に中国・広東省に 生まれ、一歳の時に国民党と共産党の内戦を逃れて家族とともに台湾へ移住した。ガキ大将的存在のアハだったが、病弱な父が家族の暮らしに小さな影を落としていた…。
【第 22回台湾金馬奨 最優秀助演女優賞・最優秀脚本賞 】
【第 36 回ベルリン国際映画祭 国際批評家連盟賞】

提供:竹書房

 


 

 

上映スケジュール・予約はこちら

【上映期間】

11/15(土)、16(日)、19(水)、22(土)、23(日)、24(月・祝)、25(火)の7日間

【料金】

2作品通し鑑賞券 3,000円

一般・シニア   1,800円
25歳以下      1,300円
18歳以下      500円
同作品リピート割 1,000円
福祉手帳割(介助者1名まで割引適用)1,000円

【上映時間】

『恋恋風塵』
109分(1時間49分)

『童年往事』
138分(2時間18分)